3行でいうと
- 2026年4〜6月は、売上が過去最高水準に伸びた一方、営業利益は前年同期比で△8.8%。円安の追い風(+3,450億円)がなければ、実質的に減益。
- 通期の営業利益見通しは3兆4,000億円に上方修正されたが、前期(3兆7,662億円)より少なく、円安で守っている面が大きい。
- 長期で見るのは、HEVの増産・北米の採算・生産体制の再編・BEV・ROE・為替に頼らない稼ぐ力の6項目。
1. 今回の決算(2027年3月期 第1四半期)
| 2025年4〜6月 | 2026年4〜6月 | 前年同期比 |
|---|
| 営業収益 | 12兆2,533億円 | 13兆5,254億円 | +10.4% |
| 営業利益 | 1兆1,661億円 | 1兆634億円 | △8.8% |
| 営業利益率 | 9.5% | 7.9% | |
| 親会社に帰属する四半期利益 | 8,413億円 | 1兆4,770億円 | +75.6% |
| 為替(1ドル) | 145円 | 160円 | 15円の円安 |
出典:2027年3月期 第1四半期決算(2026年8月4日発表)。
売上は伸びたのに利益が減った理由は、会社の資料にあります。営業利益の増減は、為替+3,450億円、営業面の努力+700億円に対して、原価改善△850億円、諸経費の増加△1,900億円、その他△2,426億円。為替の効果を除くと、営業利益は約△2,050億円の減益です(会社資料)。
営業利益はなぜ減ったか(2026年4〜6月 vs 前年同期)
単位:億円。出典:決算説明資料。為替の+3,450億円を除くと、約△2,050億円の減益(会社資料)。
損益計算書をウォーターフォールグラフで(2026年4〜6月)
単位:億円。営業収益は13兆5,254億円。四半期利益は非支配持分を含む(親会社帰属分は14,770億円)。出典:決算短信。営業利益は減ったのに、営業外損益(+9,003億円、前年同期は+860億円)が増え、純利益は+75.6%。本業の力は営業利益で見るのが基本。
- セグメント別:自動車事業の営業利益は7,199億円(△21.0%)、金融事業は2,756億円(+24.0%)。金融が増益を支えた形です。
- 地域別:北米は営業利益1,854億円で、前年同期の赤字から黒字に転換。日本は5,401億円(△16.3%)。
- 電動車:トヨタ・レクサスの販売に占める電動車比率は55.3%(前年同期47.4%)。HEVが123.8万台、BEVが11.4万台。
電動車の比率 — トヨタ・レクサス販売(4〜6月、千台)
出典:決算説明資料。電動車比率は47.4% → 55.3%。BEVは47千台から114千台へ(2.4倍)。
2. 通期見通しと株主還元
| 2027年3月期(通期見通し) | 前回見通し | 今回見通し(2026年8月) | 前期実績 |
|---|
| 営業収益 | 51兆円 | 54兆円 | 50兆6,849億円 |
| 営業利益 | 3兆円 | 3兆4,000億円 | 3兆7,662億円 |
| 親会社に帰属する当期利益 | 3兆円 | 3兆2,500億円 | 3兆8,480億円 |
| 1株あたり配当 | 100円 | 100円 | 95円 |
| 為替の前提(1ドル) | 150円 | 160円 | 151円 |
出典:同決算の説明資料。見通しには令和8年熊本地震の影響は織り込まれていません(会社資料)。
通期の営業利益:前期と、今期の見通し
単位:億円。出典:決算説明資料。今期見通しは前期より少ない。
通期の営業利益見通しは、なぜ上がったか(前回 → 今回)
単位:億円。縦軸は26,000億円から表示(途中を省略)。出典:決算説明資料。上方修正(+4,000億円)の主因は、為替前提の見直し(+4,800億円)。
見通しは上がったが、中身は為替。今回の上方修正(+4,000億円)のうち、為替の前提の見直し(150円→160円)が+4,800億円を占めます。為替以外は、営業面の努力などの積み上げです。
株主還元は強化。自己株式の取得枠は上限1兆円(市場買付)、2億株を消却(発行済株式総数の1.37%)。年間配当の予想は100円(前期95円)です。会社は、ROE20%を「ひとつのモノサシ」として、稼ぐ力と資本効率を高めると説明しています。
3. 長期でこれから見るべきこと(マイルストーン)
決算ごとの増減益より、「数年かけて何が実現すると、稼ぐ力が上がるのか」を見るほうが、長期の判断には役立ちます。会社が示した計画を、確認の目印にします。
マイルストーンを時間軸で見る
会社の説明資料にある計画。番号は、表のマイルストーンに対応。時期は目標であり、保証ではありません。ROE20%は時期の明示がない目標です。
| 確認すること | 会社が開示している内容 | 見る指標 | 外れた場合 |
|---|
| ① HEV(ハイブリッド)の増産と電池 | 2026年にHEV販売が初めて500万台超の計画。日本では2027〜28年に60万台規模のHEV用電池ラインを次世代電池へ切り替え | HEV販売台数、電池の生産能力と原価 | 需要に供給が追いつかない、または原価が下がらず利益率が伸びない |
| ② 北米の採算 | 2026年4〜6月は営業利益1,854億円(前年同期は211億円の赤字)。価格改定・為替・関税の低減が寄与 | 北米の営業利益、関税の動向、価格改定の通りやすさ | 関税や需要の変化で、再び赤字に |
| ③ 生産体制の再編 | 米国:テキサス第2工場(2026年7月公表)、タコマ工場で年15万台(2030年稼働)。インド:第3工場(2026年稼働)と第4工場(2029年稼働)で合計年20万台 | 各工場の稼働開始時期、投資額、現地需要 | 立ち上げ遅れ、需要の読み違いによる稼働率低下 |
| ④ BEV(電気自動車)の位置づけ | 2026年4〜6月のBEV販売は11.4万台(前年同期の2.4倍)。ただし通期見通しは59.8万台から53.3万台へ引き下げ | BEV販売台数、BEV事業の採算、競合との価格差 | BEVの競争力不足、または普及の遅れ・加速のどちらに振れても、HEV一本足の見直しが必要になる |
| ⑤ 資本効率(ROE 20%) | ROE20%を「ひとつのモノサシ」に。自己株式の取得枠は上限1兆円、2億株(発行済の1.37%)を消却 | ROE、自己株式の取得の進み具合、純資産 | 成長投資と還元のバランスが崩れ、資本効率が改善しない |
| ⑥ 為替に頼らない稼ぐ力 | 為替・スワップ等の影響を除いた通期営業利益は前期比で約△7,850億円(会社資料) | 為替を除いた営業利益、原価改善、バリューチェーン収益 | 円高に振れると、利益が急に目減りする |
出典:同決算の説明資料・決算短信。表は筆者が整理。
ポイントは、HEVの増産(①)と北米の採算(②)が、為替に頼らない利益の柱になれるか(⑥)です。為替の影響を除いた営業利益が回復していくかどうかが、決算を読むうえでの大きな分かれ目になります。
4. 気をつけたいこと
- 円高への反転:見通しは1ドル160円が前提。為替が動けば、利益は大きく変わります。
- 関税・貿易政策:前年同期(2025年4〜6月)は北米が赤字でした。今期は価格改定や関税の負担低減で黒字に転じましたが、貿易政策の先行きは不透明です。
- 中東情勢:今期の営業利益に影響が出ており、代替の物流ルート構築で対応中です。
- 地震の影響:令和8年熊本地震の影響は、見通しに反映されていません。
- グループ構造の変化:日野自動車とその連結子会社が連結から外れ、前年との単純比較に注意が必要です。
5. 財務の体力と、この1年の株価
貸借対照表(2026年6月末)
単位:億円(図は億円表示)。親会社所有者帰属持分比率は36.4%(2026年3月末は37.8%)。出典:決算短信。
この1年の株価の推移(終値、円)
出典:株価データ(日次終値、2026/10/13時点)。1年間の安値は 2,686円、高値は 3,944円。
自己資本の厚さ(親会社帰属持分比率 36.4%)は、成長投資と株主還元を両立するための土台です。株価は為替や関税のニュースで動きやすい面があります。
6. 長期で積み立てる人にとって
トヨタは、日本株の代表格として多くの人のポートフォリオに入っています。個別の売買の判断はここでは示しません。ひとつの見方として、決算の増減益に一喜一憂せず、「為替を除いた利益が戻るか」「HEVと北米が育つか」という数年単位の変化を、年に1〜2回点検する。配当や自社株買いが、長期保有の下支えになる面もあります。
7. 次に確認する時期
- 次の四半期決算(2027年3月期 第2四半期):為替を除いた営業利益、北米の採算、BEV販売台数。
- 2026年中:HEV販売500万台超が達成できそうか。
- 2027〜28年:日本でのHEV用次世代電池ラインの切り替え。2029〜2030年:インド第4工場、タコマ工場の稼働。
気になる銘柄は、ウォッチリストで見守る
保有前の銘柄も、価格と値動きをリストで一覧。気になる銘柄を、みんなでFIREのウォッチリストに入れておけます。
出典
更新履歴
- 2026年10月13日 初版(2027年3月期 第1四半期決算に基づく)