COLUMN · 業界分析

不動産業界を、
長期投資家の目線で読む

金利・人口というマクロと、大手5社の決算比較

作成 2026年10月13日情報の時点 大手5社の2026年3月期決算(各社の決算短信)、金融データは2026年10月13日時点
この記事について 特定の銘柄の売買を勧めるものではなく、公開資料の内容と「長期で何を見ればよいか」を整理した情報提供です。数値・時期は会社の開示資料に基づき、末尾の出典で確認できます。投資の判断はご自身の責任でお願いします。 この記事は、公開資料をもとにAIが作成しています。誤りに気づかれた場合は、support@fire-app.jpまでお知らせください。

3行でいうと

  • 大手5社は、2026年3月期に全社が増益(営業利益 +6.6%〜+18.6%)。ところが株価は、2026年2〜3月の高値から2〜4割下落(1年では+6%〜△10%)。日経平均(1年で+44.7%)には、大きく後れを取っている。
  • 理由の中心は金利。政策金利は2024年7月の0.25%から、2026年9月に1.25%まで上昇し、10年国債利回りは3%前後に。一方、世帯数は2030年をピークに減少に向かう。
  • 5社でも、稼ぎ方は違う。営業利益率は住友不動産の28.3%から東急の13.4%まで開きがある。長期で見るのは、金利上昇を、賃料と価格に転嫁できるか。

1. 不動産業界は、何で稼ぐのか

ここで見るのは、オフィスビルや商業施設、分譲マンションなどを手がける総合デベロッパーです。稼ぎ方は、大きく3つに分けられます。

賃貸の比率が高い会社ほど利益率が高く、安定する傾向があります。5社を比べる前に、「この会社は何で稼いでいるか」を意識すると、決算の読み方が変わります。

会社特徴(一般的な位置づけ)
三井不動産国内最大手のひとつ。オフィス・商業・住宅・ホテルを幅広く手がける
三菱地所丸の内・大手町など都心のオフィスが強み
住友不動産オフィスの賃貸を主力とし、新築マンションも手がける
東急不動産HD渋谷など沿線の再開発に加え、リゾート・再生可能エネルギーなど
野村不動産HD分譲マンション「プラウド」を軸に、賃貸・運用・仲介も

2. マクロ① 金利 — 最大の分かれ目

不動産業界は借入が多い業界です。金利が上がると、次の3つが同時に起きます。

日銀の政策金利と、10年国債利回り(2021年10月〜2026年9月)
0.00%1.00%2.00%3.00%10年国債利回り 2.99%日銀の政策金利 1.25%2021/102024/42026/9
10年国債利回りは月平均。政策金利は無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標(2024年3月以降は「0〜0.1%程度」を0.05%として表示)。出典:財務省、日本銀行。政策金利は2024年7月の0.25%から、2026年9月の1.25%まで上昇。10年国債利回りは、同年10月初めに3.09%。

2026年9月18日の決定で、日銀は無担保コールレートの誘導目標を1.25%程度としました(賛成7、反対2)。短期間に、ここまで金利が上がった局面は、不動産株にとっては逆風として意識されやすい時期です。

3. マクロ② 人口と世帯数 — 長い時間軸の追い風と逆風

住宅の需要を決めるのは、人口ではなく世帯数です。日本の世帯数は、一人暮らしの増加(世帯の小規模化)に支えられて、2030年まで増えます。その後は減少に転じます。

世帯数と人口は、これからどう動くか(国立社会保障・人口問題研究所の推計)
5,570万2020年世帯数5,773万2030年ピーク5,261万2050年単独世帯44.3%12,615万2020年総人口10,880万2045年8,700万2070年
上:一般世帯数(2024年推計)、下:総人口(令和5年推計・出生中位)。単位は万世帯・万人。世帯数は2030年にピークを迎え、その後は減少。総人口は一足先に減少が続く。単独世帯の割合は、2020年の38.0%から2050年の44.3%へ。

4. マクロ③ 都心の価格 — 高いまま、売れるのか

報道によれば、不動産経済研究所の調査で、2026年上半期の首都圏の新築分譲マンションの平均価格は1億135万円と、上半期として初めて1億円を超えました。東京23区は1億4,249万円(前年同期比+9.1%)。建築費や人手不足、資材価格の上昇が背景です。価格が上がれば、会社の売上・利益には追い風ですが、買い手がついてくるかが、次の論点です。

5. 大手5社を、決算で比べる

5社はいずれも日本基準の連結決算で、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の決算短信を使います。

営業収益営業利益営業利益率自己資本比率ROE来期予想 営業利益予想PER
三井不動産27,097億3,978億14.7%32.4%8.7%4,100億(+3.1%)13.7倍
三菱地所17,461億3,297億18.9%31.4%8.5%3,700億(+12.2%)17.7倍
住友不動産10,578億2,992億28.3%34.4%9.2%3,200億(+7.0%)13.0倍
東急不動産HD12,460億1,669億13.4%26.3%—1,900億(+13.9%)8.5倍
野村不動産HD9,425億1,382億14.7%28.5%10.7%1,400億(+1.3%)8.4倍

単位:億円(営業収益・営業利益)。予想PERは2026年10月13日の株価終値と、2027年3月期の会社予想EPSから算出。東急不動産HDのROEは、決算短信に記載がないため省略。出典:各社の決算短信、株価データ。

営業利益率(2026年3月期)— 稼ぎ方の違い
住友不動産28.3%三菱地所18.9%三井不動産14.7%野村不動産HD14.7%東急不動産HD13.4%
営業利益率=営業利益÷営業収益(売上高)。出典:各社の決算短信(2026年3月期)。

稼ぎ方の違いが、利益率に出ています。住友不動産の28.3%は、賃貸の比重の高さを映したもので、突出しています。三井不動産と野村不動産HDは14.7%で並び、東急不動産HDが13.4%です。

営業利益の伸び — 今期の実績と、来期の会社予想
2026年3月期(実績)2027年3月期(会社予想)三井不動産+6.7%+3.1%三菱地所+6.6%+12.2%住友不動産+10.2%+7.0%東急不動産HD+18.6%+13.9%野村不動産HD+16.2%+1.3%
前期比の営業利益の増減率。出典:各社の決算短信。全社が増益。来期予想で2桁成長なのは、三菱地所(+12.2%)と東急(+13.9%)。野村は+1.3%と、ほぼ横ばい。
営業利益の規模(億円)
2026年3月期(実績)2027年3月期(会社予想)三井不動産3,9784,100三菱地所3,2973,700住友不動産2,9923,200東急不動産HD1,6691,900野村不動産HD1,3821,400
単位:億円。出典:各社の決算短信。

伸びの質を見る。今期は東急(+18.6%)と野村(+16.2%)が大きく伸びましたが、来期の会社予想では、野村が+1.3%にとどまります。三菱地所(+12.2%)は、来期の伸びが今期の約2倍に加速する予想です。

自己資本比率(2026年3月末)— 財務の体力
住友不動産34.4%三井不動産32.4%三菱地所31.4%野村不動産HD28.5%東急不動産HD26.3%
自己資本比率が低いほど、負債(借入)の比率が高く、金利上昇の影響を受けやすい。出典:各社の決算短信。

財務の体力。自己資本比率は、住友不動産(34.4%)が最も高く、東急不動産HD(26.3%)が最も低い。比率が低い会社ほど、金利上昇の影響を受けやすい構造です。

この1年の株価(2025年10月14日=100)
100125150日経平均 145三菱地所 106東急 99住友 96野村 93三井 902025/10/142026/10/13
日次終値を2025年10月14日=100として指数化(株式分割調整済み)。出典:株価データ。5社は、1年で+6%〜△10%。日経平均は+44.7%と、大きく差がついている。5社とも2026年2〜3月に高値をつけ、そこから現在まで△24.6%〜△41.6%下落(日次終値ベース)。
予想PER — 株価は、会社予想の利益の何倍か
三菱地所17.7倍三井不動産13.7倍住友不動産13.0倍東急不動産HD8.5倍野村不動産HD8.4倍
予想PER=2026年10月13日の株価終値÷2027年3月期の会社予想EPS(決算短信)。会社予想EPSは自社株買いの影響を含む。出典:株価データ、各社の決算短信。

決算は5社とも増益なのに、株価は1年で横ばいか下落です。予想PERは、東急・野村で8倍台、三井・住友で13倍台、三菱地所で17倍台と、会社ごとに期待の違いが出ています。金利上昇への警戒と、日経平均が大きく上昇した局面との対比が、数字に現れています。株価が割安かどうかの判断は、この記事ではしません。

6. 長期で見るべきこと(マイルストーン)

金利、人口、価格という大きな流れのなかで、「何が起きれば、長期の稼ぐ力が保たれるのか」を6つに整理しました。

確認することなぜ重要か見る指標外れた場合
① 金利上昇と、賃料・価格の転嫁借入が多い業界で、金利が上がると利払いが増える。賃料や分譲価格に転嫁できれば吸収できる営業利益の伸び、営業利益率、受取賃料の動き、日銀の会合賃料・価格が追いつかず、利益が減る。評価(不動産の価値)も下がりやすい
② 都心オフィス・商業施設の稼働賃貸は、利益の安定した柱。空室が増えると、全社の利益が揺らぐ空室率、賃料の改定、各社の賃貸収益新規供給の増加やテナント需要の減少で、賃料が下がる
③ 分譲マンションの価格と販売建築費の高騰で価格が上がり続けている。高すぎると、買える人が減る契約率、販売戸数、在庫(売れ残り)、粗利率価格が需要から離れ、販売が減る。利益の振れが大きくなる
④ 世帯数のピーク(2030年)に向けた需要の質世帯数は2030年をピークに減少。都心・単身向けなど、需要が残る場所に偏るかが分かれ目都心の人口・世帯、物件の立地構成郊外・地方の物件で、需要が先に細る
⑤ 海外・ホテル・新規領域の収益化国内の人口減を、海外や新分野で補う動き海外・新規事業の利益、投資額に見合う成果投資が先行し、収益が出ない。為替の影響も受ける
⑥ 財務の体力と、株主還元自己資本比率は26〜34%台。金利上昇に耐えつつ、配当・自社株買いを続けられるか自己資本比率、ROE、自社株買いの進捗財務の余裕が減り、還元を維持しにくくなる

出典:各社の決算短信、日本銀行、国立社会保障・人口問題研究所。表は筆者が整理。

7. 気をつけたいこと

8. 長期で積み立てる人にとって

個別銘柄の売買の判断は、ここでは示しません。ひとつの見方として、不動産は金利に敏感なセクターで、日本株や全世界株の指数にも、一定の比率で含まれています。指数のファンドで積み立てている人は、すでに間接的に持っているはずです。そのうえで個別に加えるなら、「金利が上がる局面で、どのくらい値動きが大きくなるか」を理解したうえで、資産全体の一部にとどめる。そのくらいの距離感が、長期投資とは相性が良いと考えます。

9. 次に確認する時期

気になる銘柄を、並べて比べる

現在価格や配当利回りなどの指標は表で、価格の推移は起点を100とした指数チャートで重ねて比較できます。

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