COLUMN · 個別銘柄

SpaceXの目論見書を、
長期投資家の目線で読む

赤字の理由と、これから10年で見るべきマイルストーン

作成 2026年10月13日情報の時点 目論見書(2026年6月12日付)
この記事について 特定の銘柄の売買を勧めるものではなく、公開資料の内容と「長期で何を見ればよいか」を整理した情報提供です。数値・時期は会社の開示資料に基づき、末尾の出典で確認できます。投資の判断はご自身の責任でお願いします。 この記事は、公開資料をもとにAIが作成しています。誤りに気づかれた場合は、support@fire-app.jpまでお知らせください。

3行でいうと

  • 2025年の売上高は$187億(前年比+33%)。ただし営業損失は$26億、純損失は$49億。稼いでいるのはStarlink、赤字の主因はAI部門。
  • 長期の価値を分ける最大の前提は「Starshipを完全再使用で運用できるか」。目論見書もこれを最大のリスクとして書いている。
  • 長期投資家が見るのは日々の株価ではなく、会社自身が時期つきで示した目標が実現していくか。この記事では6つに整理した。

1. 何をしている会社か

目論見書によれば、SpaceXは宇宙・通信・AIの3つを、垂直統合(部品から運用まで自社で持つ)で手がける会社です。2026年2月にxAIを取得し、AIが第3の柱になりました。過去の数字は、取得後の形に合わせて合算し直されています。

セグメント中身2025年の売上2025年の営業損益
Space(宇宙)Falcon・Dragon・Starship(打上げ170回/年)$4,086M$(657)M
Connectivity(通信)Starlink(契約者 約1,030万、2026年3月末)$11,387M$4,423M
AIxAI・Grok・X(2026年2月に買収)$3,201M$(6,355)M

出典:目論見書(Form 424B4)Summary Historical Consolidated Financial and Operating Data。M=百万ドル。

売上高と営業利益(損失)の推移
$10.4B2023年$14.0B2024年$18.7B2025年$-3.5B2023年$+0.5B2024年$-2.6B2025年
上:売上高、下:営業利益(損失)。単位は十億ドル。出典:目論見書。

2. 数字から見えること

2023年2024年2025年2026年1〜3月
売上高$10,387M$14,015M$18,674M$4,694M
営業利益(損失)$(3,505)M$466M$(2,589)M$(1,943)M
純利益(損失)$(4,628)M$791M$(4,937)M$(4,276)M
設備投資$4,415M$11,163M$20,737M$10,107M

出典:同上。設備投資は3セグメントの合計。

2025年の営業利益(損失)の内訳 — 稼ぐ部門と、赤字の部門
-657Space(宇宙)+4,423Connectivity(通信)-6,355AI-2,589営業損失(合計)
単位:百万ドル。出典:目論見書(セグメント別営業損益)。通信の黒字(+44億ドル)を、AIの赤字(△64億ドル)が飲み込んでいる。
損益計算書をウォーターフォールグラフで(2025年)
18,674売上高-21,263費用-2,589営業損失-2,348営業外・税など-4,937純損失
単位:百万ドル。「営業外・税など」は、純損失と営業損失の差額(筆者計算)。出典:目論見書。
稼ぐ現金と、使う現金 — 営業キャッシュフローと設備投資
$4.5B$4.4B2023年$5.8B$11.2B2024年$6.8B$20.7B2025年営業CF設備投資
単位:十億ドル。出典:目論見書。2025年は、設備投資が営業CFの約3倍。差額は外部資金(今回のIPOなど)で埋める構図。
Starlink 契約者数と、1人あたり月額
2.3M2023末$994.4M2024末$918.9M2025末$8110.3M2026/3末$66
下段の$はARPU(契約者1人あたり月額収入)
契約者数は百万。出典:目論見書。契約者は4倍強に増えたが、1人あたり月額は3分の2に低下。
貸借対照表(2026年3月末)— 何を持ち、どう調達しているか
資産 102,094負債・純資産 102,094その他資産32,363有形固定資産53,879現金15,852純資産34,533優先株 7,049負債60,512
単位:百万ドル。優先株=償還可能転換優先株(上場により普通株へ転換)。出典:目論見書。資産の半分超が有形固定資産(ロケット・衛星・データセンター)。

3. 10年後に価値を決める条件(マイルストーン)

赤字そのものは、成長投資の結果としてありえます。長期で見るときの問いは「赤字を払ってまで進めている計画が、時期どおりに実現しているか」です。目論見書が自ら示した目標を、確認の目印にします。

マイルストーンを時間軸で見る
2026年2027年2028年2029年①③★⑤①2026年下期Starship が軌道へ荷物を運び始める③2026年下期Starlink V3 衛星の展開開始★2027年V2 Mobile 衛星(通信用)の展開開始⑤早ければ2028年軌道上AI計算衛星の展開開始
会社が目論見書で示した予定。番号は表のマイルストーンに対応(★は表外)。時期は目標であり、保証ではありません。出典:目論見書。
確認すること会社が開示している目標・時期見る指標外れた場合
① Starship が軌道へ荷物を運び始める2026年下期に軌道への搭載物の投入を開始する予定(目論見書)飛行試験の結果、FAAの承認、実際の顧客ペイロード次世代衛星の展開と、その先の計画が後ろ倒しになる
② 完全再使用と、航空機並みの高頻度運用「完全かつ迅速な再使用」を目指す。ブースターの回収には成功済み再使用の回数、打上げの間隔、1回あたりの費用打上げ単価が下がらず、成長戦略の前提が崩れる。目論見書自身が「大規模な軌道上AI計算衛星は、完全再使用がないと経済的に成り立たない」と記載
③ Starlink V3 衛星の展開2026年下期からStarshipで展開。1機あたり下り1Tbps、1回の打上げで最大60機展開数、契約者数、1人あたり月額(ARPU)成長が現行世代(V2)の容量に縛られる
④ 軌道上での推進剤補給月・火星計画の前提として必要(目論見書)補給実証の成否と時期月面・惑星探査の計画が成立しにくくなる
⑤ 軌道上AI計算衛星早ければ2028年に展開開始初号機の打上げ、AI部門の稼働規模(2026年1〜3月で約1GW)AI向けの巨額投資に見合う収益化が遅れる
⑥ AI部門の赤字縮小—(具体的な黒字化時期は示されていない)AI部門の営業損益、設備投資と売上の比率全社の赤字と資金需要が長引く

出典:目論見書 Prospectus Summary/Risk Factors/MD&A。表は筆者が整理。

特に①と②が土台です。目論見書は、Starshipの開発・量産・再使用が遅れれば「成長戦略が制約される」と明記し、過去の飛行試験の一部で、FAAが事故(mishap)と判定し、会社主導の調査が行われたと書いています。①②が進めば③〜⑤が連鎖して動き、遅れれば全体が後ろにずれる、という構造です。

4. 気をつけたいこと

5. 上場後の株価の動き

上場からまだ数か月ですが、値動きの大きさは見て取れます。

上場後の株価の推移(終値、米ドル)
$150$200公開価格 $135$211$1082026/6/12 上場2026/10/12
出典:株価データ(日次終値、2026/10/12時点)。上場後の安値は $108.27、高値は $211.39。上場後わずか数か月で、最大2倍近く動いている点に注意。

株価は日々、期待や需給で大きく動きます。マイルストーン型の銘柄では、予定の進み具合のニュースで、短期間に株価が大きく上下するのが普通です。値動きの大きさ自体が、長期の積立で持つときの「付き合い方」の前提になります。

6. 長期で積み立てる人にとって

個別の売買の判断は、この記事では示しません。ひとつだけ言えるのは、こうしたマイルストーン型の銘柄は、予定が1年ずれるだけで評価が大きく変わりうるということです。投資するなら、資産全体のごく一部にとどめて、年に1〜2回、上の6項目を点検する。それ以外の日々の値動きに、神経を使いすぎない。そのくらいの距離感が、長期投資とは相性が良いと考えます。

7. 次に確認する時期

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