3行でいうと
- 過去の大きな下落は、米国の株価で−25%〜−57%、日経平均では−80%まで。深さも、回復までの時間も、毎回まったく違った。
- ピークの水準に戻るまでは、コロナで約6か月、リーマンで約5.5年、ITバブルで約7.2年。日経平均がバブルの高値を超えるのに、約34年かかった。
- ただし、毎月積み立てを続けた場合の元本の回復は、一括で買うより早かった(S&P500・2007年10月から始めた例では、約2年)。下落を「事前に避ける」より、「耐えられる持ち方」を決めておくのが、長期投資の考え方。
1. 5つの下落を、並べてみる
株価の大きな下落は、ニュースのたびに「今回は特別だ」と語られます。しかし、実際の数字を並べると、深さも、回復までの時間も、それぞれ違うことが分かります。ここでは、米国のS&P500と日経平均で、5つの下落を確認します。
| 出来事・指数 | 下落率(ピーク→底、かかった期間) | ピークの水準に回復するまで |
|---|
| ITバブル崩壊(2000〜02年) S&P500 | −49%(2000/3→2002/10、2.5年) | 7.2年(2007年5月) |
| ITバブル崩壊(2000〜02年) 日経平均 | −63%(2000/4→2003/4、3.0年) | 15.2年(2015年6月) |
| リーマン・ショック(2007〜09年) S&P500 | −57%(2007/10→2009/3、1.4年) | 5.5年(2013年3月) |
| リーマン・ショック(2007〜09年) 日経平均 | −61%(2007/7→2009/3、1.7年) | 7.6年(2015年2月) |
| コロナ・ショック(2020年) S&P500 | −34%(2020/2→2020/3、1か月) | 6か月(2020年8月) |
| コロナ・ショック(2020年) 日経平均 | −31%(2020/1→2020/3、2か月) | 10か月(2020年11月) |
| 2022年の下落(2022年) S&P500 | −25%(2022/1→2022/10、9か月) | 2.0年(2024年1月) |
| 2022年の下落(2022年) 日経平均 | −16%(2022/1→2022/3、2か月) | 1.3年(2023年5月) |
| 日本のバブル崩壊(1989〜2003年) 日経平均 | −80%(1989/12→2003/4、13.3年) | 34.1年(2024年2月) |
出典:株価データ(日次終値。配当、為替は含まない価格指数)。「ピーク」は、各下落の直前の高値、「底」は、その後の最安値。表は筆者が整理。
2. 下落の「深さ」
ピークから底までの下落率(%)
出典:株価データ(日次終値、配当を含まない価格指数)。下落の深さは、リーマンで約6割、ITバブルでは日経平均が6割超。コロナは深いが短かった。
- リーマン・ショックは、S&P500が約57%、日経平均が約61%下落した。
- ITバブル崩壊は、S&P500が約49%、日経平均は約64%の下落。日経平均は、2000年のピークから底まで、約3年かかった。
- コロナ・ショックは、1か月ほどで約3割下がったが、すぐ戻った。
- 2022年は、金利の上昇を背景に、米国株が約25%下落した。
3. 「回復までの時間」は、毎回ちがう
ピークを100とした、S&P500の下落と回復(ピークからの経過)
出典:株価データ(日次終値、配当を含まない価格指数)。線が100に戻った点が、ピークの水準への回復。回復までは、コロナが約6か月、2022年が約2.0年、リーマンが約5.5年、ITバブルが約7.2年かかった。
同じ「暴落」でも、回復までの時間はコロナの約6か月から、ITバブルの約7年まで、大きく違います。下落の深さと、回復の速さは、下落が起きた時点では、予測できません。
4. 日本株の30年 — 回復に34年かかった例
日経平均の月末値(1985年〜、円)
出典:株価データ(月末終値、価格指数)。高値は1989年12月の38,916円。2003年4月に7,608円(-80%)まで下がり、高値を超えたのは2024年2月(約34年後)。
- 日経平均は、1989年12月に38,916円の高値をつけたあと、2003年4月に7,608円(−80%)まで下がった。
- 高値を超えたのは2024年2月。約34年かかった。
- これは、1つの国・1つの市場に集中した場合のリスクの例でもある。同じ期間に、米国の株価は大きく上昇した。
日本のバブル崩壊は、特別な例のように見えます。しかし、「1つの市場が、数十年、元の水準に戻らないことがある」という事実は、長期投資のリスクとして、知っておく価値があります。
5. 積み立てを続けていたら
S&P500に、毎月同額を積み立てた場合の「評価額÷元本」(%)
毎月の最初の営業日に、同じ金額を買った単純計算(価格指数ベース。配当、為替、税、手数料は含まない)。2007年10月の高値の月から始めても、最も悪い時期(2009年02月)で元本の61%、2009年11月には元本を回復。同じ時期に一括で買った場合は、2013年3月まで戻らなかった。
- S&P500、2007年10月(高値の月)から毎月積み立てた場合:最も悪い時期(2009年2月)で、元本の約61%。2009年11月(約2年後)に元本を回復した。
- 同じ高値の月に一括で買った場合は、元本に戻るまで約5.5年かかった。
- 日経平均、1989年12月(高値の月)から毎月積み立てた場合:2003年4月に、元本の約47%まで減ったが、2024年2月時点では、元本の約2.5倍になった(価格指数ベース)。
安く買える期間が長いほど、平均の取得価格は下がります。ただし、これは、過去の結果を単純に計算した例で、将来を約束するものではありません。配当、為替、税、手数料は含んでいません。
6. 長期投資家は、どう受け止めるか
- 下落は、また起きる前提で持つ。深さも、時期も、回復までの時間も、事前には分からない。
- 「耐えられる額」で持つ。下落したとき、生活のために売らなくてよい状態にしておくことが、いちばん大きな備えになる。
- 1つの国・市場に偏らない。日本の例は、集中のリスクを示している。
- 取り崩す時期は、特に注意。FIRE後に下落が重なると、回復の恩恵を受けにくい。
この記事は、特定の売買や、積立の方法を勧めるものではありません。過去の値動きは、将来を約束するものではありません。
7. 暴落のたびに確認するチェックリスト
| 確認すること | なぜ重要か |
|---|
| 下落の深さを、自分で受け止められるか | 過去の下落は、半分近くから8割まで。生活に必要なお金と、投資するお金を分けておく |
| 回復の時間を、待てるか | 数か月から、30年以上まで。必要になる時期が近いお金は、値動きの小さいもので持つ考え方もある |
| 何に分散しているか | 1つの国や1つの市場に偏ると、日本の例のように、回復まで時間がかかりうる |
| 積み立てを続けられるか | 下落局面で買い続けた人の元本回復は、一括より早かった例がある |
| 取り崩しの時期と重ならないか | FIRE後は、下落時に売ると、回復の恩恵を受けにくい(「順序リスク」) |
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